menu

シン・チャレンジ通信

令和4(2022)年4月、JR山手線田端駅からバスで10分ほどの足立区小台に新しい都立高校が開校します。
新しい学校がどんな学校になるのか、これから少しずつ説明していきます。

29.<選択決定:自己理解編3>

 中学生や高校生はやりたいこと探しの時期と言われますが、実際にはどのようにやりたいことを探しているのでしょうか。よくある例を挙げてみます。

<Aさんの例>

 「Aさんはこれまで特にやりたいことを考えたことがなかった。高校の面談でやりたいことは何かと聞かれたときには『動画配信でアニメを見ること』と答えた。進路の課題は好きなことについて調べてくることだったので、Aさんはアニメについて調べ、アニメに関係する学校について調べた。」

 これは、やりたいことの範囲を消費活動に広げてしまったため行き詰ってしまう例です。キャリアにおけるやりたいことはあくまでも生産的なこと。動画配信でアニメを見ているだけならただお金を使っているだけの消費活動です。

 もし、「アニメを参考資料にして、自作の動画を作成することが好き」ならば生産的な活動です。デジタル関係やアート関係に進んでプロフェッショナルになっていくかもしれません。

<Bさんの例>

 「Bさんは小学校の時に怪我をして理学療法の先生にケアをしてもらった経験から理学療法士にあこがれていた。そのため高校に入った後も進路希望に『理学療法士』と答えていた。医療系の大学に入るため受験勉強を頑張ったが成績が伸びず、不本意だが医療系の専門学校に入学した。」

 これは、やりたいことの範囲を職業名まで狭めすぎて行き詰った例です。職業名まで狭めるとやり直すのが大変です。

 「体やモノに関わることが好き」とか「人と関わって感謝される仕事がしたい」というように仕事や研究の要素で好きなことをまとめるとよいでしょう。それなら体やモノに関わる工学部や農学部だったか、人と関わる国際学部だったかわかりませんが大学に進学していたかもしれません。

 

 好きなことから始めようというと簡単そうですが、高校がミスリードをしないように気を付けなければなりません。この二つの例から言えることは、まず、生産的なことに注目すること、そして、職業でなく、仕事や研究の要素を視覚化することです。

 私たちは、なんとなくこれまでの現場で培われた勘や感覚に頼った進路指導ではなく、キャリア発達や臨床教育の理論に基づいたサポートをしていきます。

28.<選択決定:自己理解編2>

 選択決定の第一歩は自己理解だとされています。今回は自己理解について、自分の何を理解するのか考えてみましょう。

 自分の容貌や似合う服などの外見のことも非常に面白いテーマです。とくに思春期のみなさんにとって外見は重要です。思春期は自分とは何者かを突き詰めずにはいられない時期で、外見のことも非常に気になります。

 一方、自分の内面にも、なんで自分は決断ができないのだろうとか、また余計なことを言ってしまったとか、どう進んでいいかわからないとか、いつもたくさんの悩みや迷いが渦巻いています。

 そこで、自己の内面の理解について考えてみます。

 

 人は皆それぞれの個性がありますが、その個性は能力・適性とパーソナリティから成り立っていると考えられています。

 能力は現在の知識・技能で、適性は今後いろいろな研究や仕事の場で発揮されるだろう将来の力です。

 パーソナリティは興味・関心と価値観と性格の三つに分けられます。性格は研究や仕事や特に人間関係を持続していくときに影響しますが、選択決定そのものにはあまり影響はありません。

 自己理解に必要なことは興味・関心、能力・適性、価値観とされており、よく「やりたいこと、やれること、やるべきこと」と言われます。

 

 自分が理解できていないのは性格なのか、あるいは興味・関心や能力・適性や価値観なのか、分析して、一つずつ理解を進めていく。そうすることで、心の中のもやもやした悩みや迷いが少しずつ解決していくといいですね。

27.<選択決定:自己理解編1>

 中学3年生のみなさんは今、これまでで最も大切な選択決定の時期にいます。そこで、これから、人生の選択決定について考えていきたいと思います。

 キャリアデザインの理論では選択決定は「①自己理解→②価値観形成→③情報活用→④将来設計→⑤意思決定→⑥適応」という過程で行われます(シン・チャレンジ通信15<総合学科必修科目「産業社会と人間」>)。①から④は前後したり繰り返したりします。

 これから、この選択決定のそれぞれの過程について考えていきます。まずは自己理解について説明していきましょう。

 自分のことを理解するには、自分が知っている自分と他人が知っている自分の二つの軸で考えてみることです。

 すると、自分も他人も知っている「オープンな自分」、自分は知っているけれど他人は知らない「秘密の自分」、自分が知らないのに他人が知っている「見えない自分」、自分も他人も知らない「未来の自分」の4つの自分がいることがわかります。

 「見えない自分」は他人のアドバイスや心理テストのようなアセスメントを通して気づいていくことができます。

 しかし、どうやったら自分でも気づかず他人のアドバイスも期待できない「未来の自分」がわかるのでしょう。

 それは、自分が知っている自分と他人の知っている自分の割合の両方を高めて、自分も他人も知らない自分の割合を小さくしていくことで可能となります。

 つまり自己認知を高めると同時に自己開示をしていくこと、自分をどんどんオープンにしていくことなのです。

26.<大学進学への対応4> 一般選抜対策 ~カリキュラムとして一般選抜向けのトレーニング、自習室も完備~

 大学に進学するためのサポートについてのお話しです。本文中の番号は、大学進学のための5つのサポートの番号です。

 ①大学受験に必要な情報を活用するためのサポート

 ②自分自身の興味・関心と学力を把握するためのサポート

 ③自分にピッタリな大学、学部学科を目標設定するためのサポート

 ④その大学、学部学科で学びたいという志を持ち、自分の学力を向上させるためのサポート

 ⑤チャンスを活かして実際に合格するためのサポート

 本校では大学受験の一般選抜向けに、実際に大学に合格するためのサポートとして様々な取り組みを実施していきます。

 

 一般選抜は、ペーパーテストの点数で合否と決める選抜方法です。

 この選抜に対応するためには、高校で学んだ知識のほか、記憶力や情報処理の早さも求められるため、一定のトレーニングが必要です。

 そのための取り組みとして、授業内でのオンライン学習、一般選抜対策型の時間割、夏期講習の実施、自習室の完備が挙げられます(④)。

 

 基礎知識の獲得も、試験向けのトレーニングも、一人一人の習熟度に合わせて最適の達成課題に取り組むオンライン学習が効果的です(④)。

 これまでオンライン学習は、自宅や自習時間にそれぞれが取り組むものという位置づけでした。

 しかし、足立チャレンジでは授業に取り入れて、個別最適化された学習課題に取り組みますので、大学入学共通テストや一般選抜で合格に必要な一定の点数を挙げることができるようになります(⑤)。

 

 夏休みなどの長期休業は、主体的に様々な学びに取り組むチャンスです。

 本校でも、課題研究や本物体験はもちろん、各教科で実施する夏期講習には学び直しや検定・資格講座などを用意します。

 また、大学進学を考えている生徒のために、一般選抜対策講座も実施します(④⑤)。

 

 時間割を自分で作れるため、いわゆる「受験科目」について積み重ねて学習できるようにしたり、卒業年次に自習室を活用するため自習時間を確保したりと自分の学び方を工夫することもできます(④⑤)。

 

 図書室やラーニングコモンズでの自習は定められた時間内での利用となりますが、自習室はそれに関わらず夜9時頃まで利用できるようにする予定です。

 

 本校は、一般選抜対策は学校が強力にサポートします。

 塾や予備校に通わなくても一般選抜のトレーニングができて、自習室も完備した環境で、ワンランク上の目標をかなえましょう。

25.<大学進学への対応3> 総合型選抜・学校推薦型選抜対策 ~総合学科に有利な入試に学んだことを活かす~

 大学に進学するためのサポートについてのお話しです。本文中の番号は、大学進学のための5つのサポートの番号です。

 ①大学受験に必要な情報を活用するためのサポート

 ②自分自身の興味・関心と学力を把握するためのサポート

 ③自分にピッタリな大学、学部学科を目標設定するためのサポート

 ④その大学、学部学科で学びたいという志を持ち、自分の学力を向上させるためのサポート

 ⑤チャンスを活かして実際に合格するためのサポート

 本校では、大学受験の総合型選抜や学校推薦型選抜に対して、どのようにすれば生徒が合格するか様々な対策を考えています。

 

 総合型選抜は、高校時の学習状況、学力、興味・関心、意欲などを総合的に評価して、大学のアドミッションポリシー(入学者受入れ方針)に適した学生を選抜する制度です。

 足立チャレンジでは、入試用の基礎学力だけでなく、ゼミや課題研究で総合的な学力を身に付け、自分の興味ある大学、学部学科で学びたいという志を持つようになります(④)。

 総合的な学力を活かせる入試なので、本校の生徒にはとても有利なわけです(⑤)。

 

 学校推薦型選抜は、高校のその生徒に対する評価を重視します。

 足立チャレンジでは、選択科目を中心に学ぶので、時間割が得意科目ばかりになることもあります。

 また、選択科目は、少人数、体験的探究的学びや実技が中心で、授業に出ること、提出物を出すことが重要ですが、成績はぐんぐん伸びていきます(④⑤)。

 推薦型選抜も総合学科高校の得意とする入試だと言っていいでしょう。

 

 ちなみに指定校推薦は、大学が高校を指定する推薦制度です。

 高校の卒業生の活躍によって指定されるので、開校当初はあまり多くの機会はないでしょう。

 しかし、学校の教育活動に賛同してくれる大学が指定校として指定する可能性があります。

24.<大学進学への対応2> 大学進学ガイダンス ~キャリア教育と連動して本質から実際まで身になる支援~

 大学に進学するためのサポートについてのお話しです。本文中の番号は、大学進学のための5つのサポートの番号です。

 ①大学受験に必要な情報を活用するためのサポート

 ②自分自身の興味・関心と学力を把握するためのサポート

 ③自分にピッタリな大学、学部学科を目標設定するためのサポート

 ④その大学、学部学科で学びたいという志を持ち、自分の学力を向上させるためのサポート

 ⑤チャンスを活かして実際に合格するためのサポート

 まず、大学進学ガイダンスについてお話ししていきましょう。

 

 1、2年次では、大学進学に対応して、フューチャーデザイニングの時間に学ぶことの意義の理解、上級学校・学部学科研究、オープンキャンパス見学、大学模擬授業といった学習があります。

 ここで、進路情報を活用して大学について調べ、自分の興味・関心や価値観を理解できるようになります(①②)。

 卒業年次では、大学進学者向けに総合推薦選抜ガイダンス、共通テスト出願ガイダンス、一般選抜ガイダンスなど、目前の進学に即したガイダンスを実施して、実際の大学学部学科選びから出願まで大学受験に向けた活動ができるようにします(③)。

 

 一人一人の支援も充実しています。

 個別指導は、クラス担任とゼミ担任と進路支援担当の三者が複数の目でサポートします。

 クラス担任は学力とのマッチングや受験生活やメンタルの支援、ゼミ担任は学習支援、進路支援担当は具体的な進路先のマッチングやカウンセリングが中心です(①②③④)。

 全国共通の模擬テストやオンライン学習を実施して、相対的な学力を把握します(②)。

 そして、先生方の豊富な情報と丁寧なカウンセリングを通して、自分に合った大学・学部学科の候補を挙げられるようになります(③)。

23.<大学進学への対応1> 大学進学のためのサポート ~いかだ下りの人生の意思決定~

 意思決定の研究者であるハリー・ジェラットは「人生は激流をいかだで下るようなもの」と言っています。人生は、山登りのように目的地があって努力をすれば行きつけるものではなく、試行錯誤しながらなんとか乗り切るものだというのです。

 大学進学はこれまで、コツコツ勉強すれば報われるものだと思われてきました。しかし、激変する社会を生き抜く力が必要とされる時代にあって、大学入試も多様化を余儀なくされています。

 ジェラットは「予測、評価、決定」という意思決定の客観的・合理的な理論をとりつつも、主観的・直観的な視点を取り入れて統合的に意思決定を行うべきだとしています。

 少しわかりやすくすると次のように言えます。人は人生の選択をする際に、まず、仮の目標を立てます。そして、試行錯誤して、より完成度の高い目標に近づいていきます。しかし、往々にしてハプニングが起こってうまくいかなかったりします。そこで、自分を高めたり、時には目標をずらしたりしては、人生の選択決定を進めていくということです。

 このジェラットの理論を中心に大学に進学するためのサポートを考えてみました。

 

 ①大学受験に必要な情報を活用するためのサポート

 ②自分自身の興味・関心と学力を把握するためのサポート

 ③自分にピッタリな大学、学部学科を目標設定するためのサポート

 ④その大学、学部学科で学びたいという志を持ち、自分の学力を向上させるためのサポート

 ⑤チャンスを活かして実際に合格するためのサポート

 

 本校では、大学進学への対応として、まず、キャリア教育と連動して本質的なところから実際の進学指導まで、ガイダンスやカウンセリングを行います(①②③)。

 そして、総合型選抜や学校推薦型選抜の対策として、課題研究やゼミ学習など本校らしい学びを活かして選抜にチャレンジするサポートをしていきます(④⑤)。

 また、オンライン学習や受験科目をカリキュラムに取り入れて一般選抜向けのトレーニングをサポートし、自習室も完備します(④⑤)。

 このあと、もう少し詳しくお話ししていきます。

22.心の健康面の支援 その3

 足立地区チャレンジスクールの心の健康面の支援は(1)交流プログラムが充実していること(2)相談の体制や問題解決の体制が充実していること(3)心を支える場所や居心地のいい場所があることの3つです。

 最後に、3番目のお話しをします。

(3)心を支えてくれる場所や居心地の良い居場所があります

 足立地区チャレンジスクールは、心を支える場所や居心地のいい場所をたくさん作ります。

 カウンセリング室、相談室は将来のことや人間関係など様々な悩みや迷いについて相談する空間で、専門家による助言を入れて、扉の形やテーブルや椅子などにも気を配って相談しやすい環境を作ります。

 保健室は、怪我や体調不良を回復する場所ですが、メンタルの不調についてもアドバイスをもらえるでしょう。

 職員室はオープンスペースになっていて、先生方が身近に感じられる作りになっています。職員室隣の進路支援エリアでは、個別の相談カウンターを設けて相談がしやすいようにするほか、会話が漏れにくいミーティングコーナーも設置します。

 ゼミ室は学びの場であると同時に、居心地の良い居場所の機能を持ちます。先生と親しく話したり、相談に乗ってもらったりする場所でもあります。同じ興味関心を持った先輩後輩や外部の講師の方との交流もあるでしょう。

 ホームの教室はもちろん、食堂、ラーニングコモンズ、図書館、中庭のベンチなど一人で考え事をしたり、あるいは友人と話したりするのによい場所がたくさんあります。

心の健康面の支援はユニバーサルな支援です

 心理学者のエリクソンによれば、およそ12歳から18歳の間は青年期とされ、アイデンティティの確立に向け、精神的な苦悩を克服していくことが青年期の発達課題だと言われます。

 自分自身が何者なのか思い悩み、周りの人々や環境に影響を受けながら、だんだんと生き方を定めていく時期なのです。

 このように、青年期の発達課題を考えれば、心の健康面の支援は、そもそも必須のものだということがわかります。

 そうするとチャレンジスクールの教育は、青年期の発達課題に正面から向き合う教育であり、すべての学校で取り組むべきユニバーサルな教育を実直に行っているのだと思うのです。

21.心の健康面の支援 その2

 足立地区チャレンジスクールの心の健康面の支援は(1)交流プログラムが充実していること(2)相談の体制や問題解決の体制が充実していること(3)心を支える場所や居心地のいい場所があることの3つです。

 今回は、2番目の相談の体制や問題解決の体制について、お話します。

(2)相談体制や問題解決体制も充実しています

 学校の仕組みとして相談の体制や問題解決の体制が充実しているのも、チャレンジスクールならではの特徴です。

 高校生は、日常の不安や進路の迷いや対人関係の困難などで、先生方に相談したいと思うことが多いと思います。

 そんなときには、クラス担任の先生、ゼミ担任の先生、教科担当の先生、部活動の先生、学習進路支援担当の先生、保健室の先生がそれぞれの分野の相談担当ですので、気軽に相談してみましょう。

 特に、クラス担任とゼミ担任は生活支援と学習進路支援の両輪となり、すべての生徒がクラスとゼミの2方向の担任から支援を受ける体制になります。

 専門家による支援体制については、既設のチャレンジスクールの実績を考えると、本校もスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが配置されるでしょう。

 スクールカウンセラーの先生には、個別のカウンセリングはもちろん、入学時の全員面接や講演をしていただけるようお願いします。

 スクールソーシャルワーカーの方からは、教育分野に関する知識に加えて、社会福祉等の専門的な知識・技術を用いて、困っている生徒が置かれた様々な環境に働きかけたり、関係機関等とのネットワークを活用したりして支援をいただきます。

 問題解決の体制としては、他の都立高校同様、いじめ、暴力自殺防止など生徒の健全育成のための委員会を設置し、いじめ防止強化月間を実施します。

 教育委員会と連携してSOSの出し方教育や構成的グループエンカウンターを実施し、教育相談センターとも連携を深めていきます。

 医療、消防、警察などの地域関係機関、保護者などとも連絡を密にし、委員会や連絡協議会を開催したりして、特別支援、教育相談、健康、子供の健全育成、いじめ防止・対応などの問題解決を図ります。

20.心の健康面の支援 その1

チャレンジスクールは心の健康面の支援をします

 チャレンジスクールはもともと不登校の生徒の対応校として誕生した学校です。

 ですから、既設のチャレンジスクールも心の健康の支援は充実していますし、私たちの足立地区チャレンジスクールも充実した支援を計画しております。

 足立地区チャレンジスクールの心の健康面の支援は次の通りです。(1)まず交流プログラムが充実していること。(2)次に相談の体制や問題解決の体制が充実していること。(3)最後に心を支える場所や居心地のいい場所があることの3つです。

 これからその3つについて、お話ししていきます。

 今回はその第1番目です。

(1)交流プログラムが充実しています

 人と人との交流をしやすくするためのプログラムを入学後の早い時期に、学校の教育活動を横断して実施します。

 4月の終わりに実施する校外学習は交流プログラムの一環です。この交流プログラムは、本校の特色の一つとなるでしょう。

 たとえば、難しそうなやりとりの場面での対応や、怒りなどの強い感情をマネジメントする方法を体験的に身に付けます。

 また、ストレスについて理解し、ストレスと共に生きるスキルを身に付け、レジリエンスを向上させます。

 聞き手としてのスキルを身に付け、プレゼンテーションの技術を身に付け、人前で話す技術を身に付け、様々な問題を話し合うためのファシリテーターの技術を身に付けます。

 ここで忘れてならないのは、「チャレンジスクール指定科目」です。

 チャレンジスクールでは、家庭生活・社会生活における自立や、体験活動を通して社会性の育成を図るため、「チャレンジスクール指定科目」を設置することとなっています。

 自立心や社会性や豊かな人間性の育成を図るための科目です。

 

 本校では、交流的な教育を行う「ゼミナール」を「チャレンジ指定科目」としています。

 人間関係能力や課題対応能力といった幅広い学力の形成に役立ち、また、外部の連携先とのやり取りで礼儀作法やマナーを身に付けることができる科目です。

19.チャレンジ指定科目の「ゼミナール」その3

7.ゼミナール2

 2年次になると、いよいよ課題研究のための学びが始まります。

 時間割も、自分の興味・関心に基づいた科目、課題研究や将来のために必要な科目が中心になります。

 「ゼミ2」はその課題研究を実際に進めていく時間です。

 リサーチ・クエスチョンを行い、調査や実験や体験をします。

 9月と3月の課題成果発表会ではこれまでの研究の中間発表を行います。

8.ゼミナール3

 3年次の「ゼミ3」は引き続き、課題研究のまとめを行います。

 大学進学等に備えて夏休みまでに研究の成果をプレゼンできるようにします。

 また、同じゼミのゼミ1,ゼミ2の後輩に対して課題研究のアドバイスを行います。

 最終的に課題研究は、論文として成果を表します。

 優秀な作品はゼミの代表として内外で発表します。

9.ゼミナール4

 4年次の「ゼミ4」は4年間で卒業を計画している生徒だけのスペシャル・エディションです。

 課題研究をもとに、世のため人のためになるよう、商品や提言としてまとめ、企業・事業所や自治体に提案をします。

 母体校になる荒川商業高校では、レガロ工房という模擬株式会社を立ち上げて商品の企画提案をするという大変優れた取り組みをしてきました。

 この母体校の優れた取り組みをぜひ継承したい思いがあります。

10.新しい学びの準備

 リクルートワークス研究所の辰巳哲子氏は、ご自身が教えている大学生約50人に「自分なりの学び方」を聞いたことがあるそうです。

 すると、学生たちの回答は、「幅広い年齢層の人と話す」「五感を使う」「街に出てみる」「他人に教える」など、学習という行為を非常に柔軟に捉えた回答だったそうです*。

 

 中学生の皆さんの親の世代や、学校の先生たちが勉強していた時とは、学びの内容が大きく変わっていることがわかります。

 本校がゼミ教育を実施することは、こうした新しい学びに取り組んでいくことの象徴になると思います。

 

 わたしたちは今、新しい学びを真剣に考え、作り上げ、皆さんと共に未来を語り合いたいと思って、準備をしているところです。

 *「ネット時代の学び、覚えるより『発信』で深める」(2018/9/22 『NIKKEI STYLE』 https://style.nikkei.com/ 辰巳哲子)

18.チャレンジ指定科目の「ゼミナール」その2

4.「チャレンジ指定科目」としてのゼミナール

 チャレンジスクールには「チャレンジ指定科目」の科目を設定しています。

 自立心や社会性や豊かな人間性の育成を図るための科目です。

 本校では、「ゼミナール」を「チャレンジ指定科目」としました。

 ゼミは、学びの場であると同時に、互いに励まし合い、大変さや楽しさや達成感を分かち合う帰属集団、つまり「居場所」です。

 人間関係能力や課題対応能力といった幅広い学力の形成に役立つのです。

 また、地域や大学など外部の連携先と研究上のやり取りを行いますから、そこで礼儀作法やマナーを身に付けることができます。

 こういった交流のノウハウは先輩から後輩に伝えられていくことでしょう。

5.交流の場

 ゼミの授業が機能しやすいように、各教科にゼミ室という部屋を作ります。

 図書室や食堂や自習室などで自習ができますが、ゼミ室は重要な自学自習の場です。

 そこでは、先生と生徒、先輩と後輩がともに学んだり準備をしたりしていて、実際の交流の場になっているのです。

 ところで、これまでこのような交流的な教育の機能は部活動が担っていました。

 ゼミはこのすばらしい機能を授業に持ち込むわけで、単位の出る部活動と言ってもいいかもしれません。

 しかも、部活動よりも大学や生涯の学びにダイレクトに役立つ内容で、大学入試の面接の時には最大の「強み」になります。

6.ゼミナール1

 1年次の「ゼミ1*」はゼミ選びのためのプレゼミです。

 ゼミ1では、ゴールデンウィークのクエストレポート、夏休みの本物体験、秋の模擬ゼミ体験などを行います。

 こういった体験や授業、アセスメントや担任との面談を通して、自分の興味・関心に気づき、自分の未来を設計して、2年次以降のゼミに登録します。

*パンフレットでは、体験活動となっており、2年次でゼミナール1を学ぶとしていましたが、年次と講座の数字を一致させることを原則にしました。次回作成するパンフレットでは改正します。

17.チャレンジ指定科目の「ゼミナール」その1

1.ゼミナールとは

 ゼミナール(seminar)はドイツ語で演習の意味です。英語では同じつづりでセミナーになります。

 ドイツ語読みのゼミナールだと大学などの少人数演習授業を指しますが、英語読みのセミナーというと民間主催の一般的な講義を指すことが多いようです。

 今から約400年前の戦国時代に建てられたイエズス会の学校をセミナリオ(seminário)と言いましたが、これも同じ語源です。

 

2.大学のゼミナール(ゼミ)

 大学では、大学は4年間の学びを、卒業研究や卒業論文、卒業制作などに集大成します。

 この集大成を支援する学習がゼミナールで、ゼミと略されます(以下「ゼミ」と言います)。

 「日本幻想文学演習」(武蔵大学)とか「アントレプレヌールシップと起業家的リーダーシップ」(早稲田大学)といった名称だったり、担当教授の名を冠して浦島先生のゼミなら「浦島ゼミ」のように呼ばれたりします。

 ゼミでは、同じ学問を究めようとする同好の士が集まって、少人数でテーマに関する報告・議論、講読、研究などを行い、学びを深めていきます。

 

3.講義からゼミ形式の学びへ

 講義は知識を伝授する方法としては大変効率の良い方法です。

 しかし、学習者にとっては、ただひたすらに知識を記憶する学習になりがちで、その知識を活用して深い学びをするには、物足りない授業になってしまいます。

 そこで、大学では(高校でも)、少人数で課題解決型の体験的な学びを行うゼミ方式の授業が望まれているのです。

 

 本校では、このゼミのシステムを導入して課題研究をサポートしていきます。

 興味・関心や将来学びたい学問に応じて課題研究のテーマを教科ごとにまとめ、「国語ゼミ」「美術ゼミ」「ビジネスゼミ」など、教科や科目の名前を冠して開講します。

16.自ら調べ、自ら考え、自ら発する課題研究

 足立地区チャレンジスクールでは、PBL型の学びこそが理想の学びだと考えています。

 PBLは、プロブレム・ベースド・ラーニング(Problem Based Learning)の略です。

 訳すと「課題解決を基本とした学び」となります。

 知識の暗記などの受動的な学習ではなく、自ら課題を発見し解決する能動的な学び方です。

 課題を見つけてその改善や解決にチャレンジすること。

 失敗すること、失敗してその苦い経験を活かすこと。

 誉められたり、ダメ出しされたりして進んでいくこと。

 自分の思いをわかってもらい、周囲の人を巻き込んでいくこと。

 こんなリアルな経験を重ねて、幅広い総合的な資質・能力を身に付けていく学びです。

 

 本校では、多くの授業の中で、また、本物体験や学校行事でも、様々な機会をとらえてPBL型の学びを提供していきます。

 しかし、中でもPBLの典型は課題研究です。

 2年次から3年次にかけて、すべての生徒が課題研究を行います。

 

 PBL型の学びは、本校の「育てたい生徒像」の学び方「自調・自考・自発」のサイクルを、螺旋を描くように発展的に繰り返していきます。

 それでは、課題研究の学び方を見ていきましょう。

 

①自ら調べる

 研究の前提として、自分の学問的興味関心がどこにあるか、この研究の意義はなにか、を明らかにします。

 そして、自分の興味・関心や将来学びたい学問などを踏まえて、リサーチ・クエスチョン(学問的な深い問いを立てること)を行います。

 その後、課題研究の方法に基づいて、様々な実験、アンケートや聞き取りの調査、模擬体験や踏査、鑑賞などを通して、論の根拠を収集します。

 先生の知識も貴重な情報の一つです。

 しかし集めた情報は、自分の研究に役立てるもので、それが「正解」なわけではありません。

②自ら考える

 情報を整理・分析し、根拠に基づいて思考を深めます。

 ここではじめて情報が活用されます。

 こういった学びで「考える」ということは、普段日常の意思決定よりもっと深く考えることを指しています。

 かけ離れた二つ以上の情報を、自分の頭で結びつけたり組み立てたりし、方向性や違いを見つけたり、新しい発見をしたりします。

 友人と話し合ったり、先生のサジェストをいただいたり、一人でうろうろ歩き回ったり、ひたすら図にしてみたり、いろいろな角度から頭を使ってみます。

③自ら発する

 仮説を検証し、論をまとめて、結論付けていきます。

 ここまでの過程でも、友人と話し合ったり中間発表などをしたりしていますが、いよいよ最後のアウトプットをします。

 アウトプットは大事な思考過程です。

 アウトプットのために学びがあると言っても過言ではありません。

 課題研究では、まとめ上げた論をより一層、世のため人のために役立てるためのアウトプットだと考えてください。

 具体的には、文章や作品として表現したり、証明して見せたり、プレゼンテーションを行ったりします。

 成果発表会では、データ収集にご協力いただいた学校外の方々やお世話になった先生、ここまで見守ってくれた保護者の方、支え合った友人や後輩に成果を発表します。

 

 これらの活動は、(1)課題の設定(2)情報の収集(3)整理・分析(4)まとめ・表現、という探究活動のプロセスでもあります。

 また、キャリアデザインの意思決定の過程とも重なってきます。

 困難を乗り越え、成功体験を積み、一層大きな課題をクリアできるようになっていく…。

 これが、PBL型の課題研究の学びです。

15.総合学科必修科目「産業社会と人間」

 総合学科の高校では、「産業社会と人間」という科目が必修になっています。

 「産業社会と人間」の授業では、リアルな体験や体験的な学習を通して、職業と生活のためのコンピテンシーを身に付け、産業と社会の未来を考察し、進路と自己実現のデザインをします*。

 これは、学校の教育活動全体で行われるキャリア教育の学びの内容そのものでもあります。

 「産業社会と人間」は、本校では1年次で全員が学びます。

 現在のところ、本校で考えている「産業社会と人間」の内容を見ていきましょう。

〇リアルな体験や体験的な学習

 1年次では職業に関わる体験だけでなく、各教科の学習に関連する本物体験を実施します。

 たとえば、自然科学や語学の体験、芸術や伝統芸能の体験、起業の体験をします。

 リアルな体験の重要な働きに「遠い立場の大人に評価してもらう」という点があります。

 同年代だけでなく、多様な年代の人々とつながりができる方がいい。そのために、様々な外部の人と連携をしていこうと考えています。

 体験的な学習は、自分で成果を実感できる活動的な学習方法です。

 「産業社会と人間」ではもちろん様々な学習場面で実施されます。

〇職業と生活のためのコンピテンシー

 学校の教育活動全体で様々なスキルを身に付け、各々のスキルが集まって、生きていく総合的な力であるコンピテンシーが身に付きます。

 本校の「産業社会と人間」では、ビジネススキル獲得の面を強く感じるかもしれません。

 ビジネススキルを身に付けたり、経営者と消費者から見たお金の教育を行います。

 対人関係のスキルも身に付けます。

 1対1の対話の方法から心の健康の保ち方、レジリエンスを高めることも含まれています。

 レジリエンスはストレスに対して対応できる性質で、メンタルタフネスともいいますが、タフさ(強さ)より持続性、柔軟性、楽観性の方を大切にします。

〇産業と社会の未来

 2050年問題を知ってますか。

 2050年と言えば今から30年後、ちょうど生徒の皆さんが皆さんの親ぐらいになった時、世界は大きく変わっていると言います。

 人工知能やデジタルトランスフォーメーションといった最先端科学やSGDsをテーマに見方、考え方を深めたりします。

 家庭労働の外部化について考えたり、貧困の問題を考えたりと、本校の特色のある科目である家庭科や情報・ビジネスの科目につながる学びも多いと思います。

〇進路と自己実現のデザイン

 キャリアデザインは、「①自己理解→②価値観形成→③情報活用→④将来設計→⑤意思決定→⑥適応」という意思決定の理論で成り立っています。

 たとえば洋服を選ぶ時でも「①自分の体形を知り→②自分の好みをはっきりさせ→③どんな服があるか比較検討し→④着てみたときを想像し→⑤実際に選んで買って→⑥着て生活する」という流れになります。

 人生の選択も①自分の進路適性を理解し→②学ぶ意義・働く意義を理解し→③進路情報を活用し→④将来設計を経て→⑤進路に関わる決定を行い→⑥その環境に適応していきます。

 1年生の意思決定としては履修科目の選択を決定することが大きなテーマです。

 ちなみに、2年次は課題研究のテーマを決定し、卒業年次は卒業後の進路決定を行います。

 こういったデザイニング自体もコンピテンシーの一部で、自分で調べ、自分で考え、自分で発信する学びの課程とも重なります。

 

 さて、このように「産業社会と人間」で学んでもらいたい内容は、幅が広くて分量も多い。

 実は今、授業の計画を立てているところですが、このままでは学習の内容があふれかえってしまいます。

 そこで、考えているのが、「教科横断型の産業社会と人間」です。

 たとえば、国語の時間に対人スキルの練習、情報の時間に情報活用やデジタルトランスフォーメーションについて、公共の時間に生き方・在り方やルールやモラル、保健でメンタルヘルス、英語や化学でSGDsを取り上げ、行事で体験活動などを実施するといった具合に、学校の教育活動全部を使って「産業社会と人間」の内容を学ぶのです。

 さらに、「産業社会と人間」の学びはキャリア教育の学びそのものですので、1年次で終わるわけでなく、卒業まで螺旋状に深まりながら、リアルを通して、コンピテンシーを身に付け、未来デザインしていきます。

 これが本校のキャリア教育です。

 

*高等学校学習指導要領は「産業社会と人間」について、次のように定めています。

「この科目の目標、内容、単位等を各学校において定めるに当たっては、産業社会における自己の在り方生き方について考えさせ、社会に積極的に寄与し、生涯にわたって学習に取り組む意欲や態度を養うとともに生徒の主体的な各教科・科目の選択に資するよう、就業体験活動等の体験的な学習や調査研究などを通して、次のような事項について指導することに配慮するものとする。

ア 社会生活や職業生活に必要な基本的な能力や態度及び望ましい勤労観、職業観の育成

イ 我が国の産業の発展とそれがもたらした社会の変化についての考察

ウ 自己の将来の生き方や進路についての考察及び各教科・科目の履修計画の作成」

14.特色ある3つの系列

 足立地区チャレンジスクールの学びの特色は「系列」に表れています。

 今回は系列についてお話しします。

 高等学校では、「教科」をさらに細かく分けて「科目」を置いています。

 たとえば、「社会」という教科の中に「地理A」や「日本史A」という科目を置きます。

 総合学科の科目には、国で定められ、すべての高校生が必ず学修しなければならない「必履修科目」と、自分の学習課題に合わせて選択する「選択科目」の2種類があります。必履修科目に選択科目を合わせて一定の時間数を学修することで卒業が認められます。

 選択科目は学校によっては100近くの数になりますので、それを分類してわかりやすくしたものが「系列」です。

 「系列」は「学科」や「コース」のように人のかたまりではなく、科目のかたまりなので、系列の枠を超えて選択することができます。

 本校の系列は「情報・ビジネス系列」「アート・デザイン系列」「人文・自然系列」の3つです。

「情報・ビジネス系列」

 母体校の荒川商業高校の学びを継承し、ビジネスに関わる系列を設定しました。

 「情報・ビジネス系列」には、情報の科目、コンピュータの科目、ビジネスの科目、体育の科目を設置します。

 アート・デザイン系列のまなびと連携する映像の科目や起業支援の科目、資格検定の科目が特徴です。

 幅広い力が身に付きますが、特にビジネススキルやアントレプレナーシップが身に付きます。

「アート・デザイン系列」

 芸術系の科目は他のチャレンジスクールでも大変人気があり、本校にも系列を設置することになりました。

 「アート・デザイン系列」は、音楽の科目、美術の科目、工芸の科目、家庭科の科目で構成されています。

 コンピュータを使った映像やデザインの科目が特徴です。

 特に、豊かな感性と表現力が身に付きます。

「人文・自然系列」

 国公立大学への進学希望にも対応できるよう、チャレンジスクールで始めて設置されました。

 「人文・自然系列」の科目は、国語の科目、社会科の科目、数学の科目、理科の科目、英語の科目です。

 理科の実験の科目やオンライン学習教材を個別に学習する科目が特徴です。

 特に、基礎的・基本的な学力や知識・情報の活用力が身に付きます。

 

 各系列のたくさんの選択科目を自分で調べ、自分の学習課題や将来像を見通して科目選択をし、自分の時間割を作っていきます。一人一人の時間割が、そのひとの人生設計図と言っていいでしょう。皆さんの時間割にはどんな未来が設計されるでしょうか。

13.チャレンジスクールは何がすごいか

 日本の教育は世界的にも優れていると言われています。ただし、単なる知識の獲得だけでなく、「総合的な学力」を身に付けることが課題だとされています。未曽有の事態に対応し、不確定な未来を生き抜いていくには、幅広く「総合的な学力」が必要だからです。

 学校は今、ウィルス感染を防ぐため、密集、密接、密閉を避ける工夫をしています。クラスの人数を減らして登校させる、通学に時差を設ける、知識はオンラインで学ぶ、先生は学びのまとめ役になるなどの工夫が始まりました。すると、多くの人が、これが本来の教育じゃないかと考えるようになってきました。

 チャレンジスクールのすごいところは、こういった新しい時代に必要な多様な工夫がされているところです。

 たとえば…、

 (1)クラスの人数は30人の少人数、授業も習熟度別や選択別で少人数。

 (2)通学時間に時差を設けているので、ラッシュ時間を避け、校内の密を避けられる。

 (3)検定や高卒認定やボランティアも学校の単位として認定される柔軟な単位認定制度。

 (4)たくさんの選択科目を選んで自分だけの時間割を作り、一人一人が違うスケジュールで学べる。

 (5)プレゼンや課題研究で総合的な学力が身に付く。…

 こうしてみると、チャレンジスクールが時代の最先端を行く学校であることがわかります。

 そして、私たちの足立地区チャレンジスクールは、最も新しい都立高校として、チャレンジスクールのすごいところに加えて、次のような工夫を行っていきます。

(1)キャリア教育に力を入れます。

 1年次から卒業まで一貫して、キャリア教育をしっかりと実施する授業が用意されています。総合学科ではたくさんの選択科目の中から自分の時間割を作っていきます。この時間割作りがキャリア教育の第一歩です。自分の価値観と興味・関心を知り、情報を活用し、未来をデザインし、実際の選択決定をして、その環境に適応していきます。そして、アントレプレナーシップを身に付け、自分の力で、進路の選択決定ができるようになります。この時間を「フューチャー・デザイニング」の時間と呼びます。

(2)ゼミナール(ゼミ)教育を実施します。

 2年次から「ゼミ」の時間があり、自分の研究内容に応じた「ゼミ」に所属して課題研究・企画提案を作成します。ゼミ教育を実施することで、生徒の支援を複線的に行うことができます。クラス担任は学校生活全般の支援、ゼミ担任は学習・進路の支援を行います。また、興味・関心が近い仲間が集まっているのでクラスとは違う人間関係が形成されます。このように、ゼミ教育は広範な学力と人間関係能力を身に付けさせる教育です。

 

 ますます進化するチャレンジスクール。新しいチャレンジスクールが、「シン・チャレンジ」といわれる所以(ゆえん)です。

12.育成すべき資質・能力<アントレプレナーシップ>

 アントレプレナーシップは起業家精神と訳されます。起業の志を持つことです。

 大企業の創業者になれというわけではなく(もちろんなってもいいです)、社会人になった時、自分の得意技を活かして、ネットワークを作り、仕事を取ってきて経済的に自立できるような生き方を勧めます。

 アントレプレナーシップを持った人は組織の中でも活躍できるでしょう。

 そのためには、(15)主体性(16)チャレンジ精神(17)チャンスを活かすことが必要です。

 まず (15)主体性。

 当事者意識を持ち、自分で調べ、自分で考え、自分で発信する人になってほしいと考えています。

 次に、(16)チャレンジ精神。

 好奇心・冒険心をもつこと、リスクがあっても新しいことにチャレンジすることです。

 また、0から1を作るように新たな価値を生み出し、社会に好ましい変化をもたらすことです。

 そして、(17)チャンスを活かすこと。

 チャンスの神様には後ろ髪がないから、来たタイミングを逃すと捕まえられないといいます。チャンスを活かすためには、自分の生き方ややり方に創意工夫をし、様々な方面にアンテナを張り、チャンスを逃さない姿勢を保ち、これまでの経験以上の機会を追求することが必要です。

 偶然のチャンスを手に入れる力「セレンディピティ」も必要です。キャリア理論であるクランボルツの計画的偶発性理論を踏まえると、「日頃からチャレンジ精神をもって、楽観的に柔軟に、持続して善行をするような生き方をしていると、偶然のチャンスを手に入れる力が付く」ということになります。

 ところで、OECD(経済協力開発機構)では、2015年から未来の教育について議論を行い、昨2019年に身に付けさせたい資質・能力を「ラーニング・コンパス(学びの羅針盤)」としてまとめました。

 広い意味の資質・能力をコンピテンシーと言い、このコンピテンシーは「中核的基盤(*1)」と「変革を起こす力(*2)」から成り立ちます。

 中核的基盤は「知識」「スキル」「態度」「価値」で、変革を起こす力は「新たな価値を創造する力(*3)」、「責任ある行動をとる力 (*4)」、「対立やジレンマに対処する力(*5)」だそうです。

 世界の中の自分を意識し、複雑で不確実な世の中で、より良い未来を作り出す力です。

 どうでしょう、本校で育成すべき資質・能力は、「ラーニング・コンパス」と通じ合うところがあると思いませんか。

*1 Core Foundations *2 Transformative Competencies *3 Creating new value *4 Taking responsibility *5 Reconciling conflicts, tensions and dilemmas

11.育成すべき資質・能力<他者と協働するための資質>

 人は、生きていくうえで様々な人と協力していかなくてはなりません。そのために他者と協働するための資質が必要です。

 チャレンジスクールは、教育の理念に「不登校や中途退学などでこれまでの学校生活では個性や能力等を十分に発揮できなかった生徒でも、一人一人が安心して存分に学ぶことができる時と場を提供する。」と掲げています。

 そのため、カウンセリングや相談の場所や校内の居場所を確保するなど施設の改善をしたり、入学選抜制度や登校時間や時間割を柔軟にするなどの学校の仕組みを提供したりしています。

 しかし、そういった施設や仕組みだけでなく、学びの中でも、他者と協働するための資質を身に付けていきます。

 授業やゼミナールや課題研究や行事で、他の生徒と交流をし、失敗を乗り越え、外の大人に認められたりアドバイスをもらったりする、こういった経験によってこの資質が身に付きます。

 私たちは、他者と協働するための資質を、さらに3つに分けて考えています。

 (12)基本的生活習慣・健康(13)他者理解(14)望ましい倫理観・道徳観です。

 (12)基本的生活習慣・健康は、基本的な生活習慣が持続できて、その結果、心身ともに健康だ、ということです。

 (13)他者理解は、思いやりであり、社会的公平性を持ちながら、チームで力を合わせて物事を達成していく心構えであります。

 (14)望ましい倫理観・道徳観は、マナーやコンプライアンスが身に付いていること、善き社会人として善い行いができることです。

 陰徳という言葉があります。みんなの役に立つことや誰かが困らないようにすることを、称賛や褒美などの見返りを期待することなく、一人で黙ってやっておくことです。

 立派な大人は、多かれ少なかれこのような陰徳を積んでいるのです。

 ストレスになりそうなことに対しても持続的に、柔軟に、楽観的に対応できる性質を育て、自分のことはひとまずおいて、他者利益の視点で、善い行いができるようになると、立派な大人になったと言えると思います。

10.育成すべき資質・能力<知識・情報の活用力>

 私たち人類の脳の特徴は、かけ離れた2つ以上の事柄をつなげて新しい物事を作り出すことができることです。

 ネアンデルタール人の脳はそれができなかったと言われています。

 たとえば「あなた」と「太陽」は全く別のものです。

 しかし「あなたは太陽だ」という比喩によって新しい形容を作り出すことができます。

 このようにして、人類は文明を発展させ、現代の便利で平和で安全な生活を作り出してきました。

 人類の最大の能力は、言葉や情報を脳内で処理し、活用し、課題を解決する知識・情報の活用力だと言えるのです。

 そこで、知識・情報の活用力を、(9)情報処理・活用能力(10)言語活用能力(11)課題解決力に分けて考えます。

 (9)情報処理・活用能力は、ICT機器の活用という意味に限定されず、情報を分類・整理し、全体を俯瞰し、かけ離れた二つ以上の事柄を一つに統合する力です。たとえば「台風がたくさん来る土地である」という情報と「幸せな暮らしがしたい」という願いを統合する力です。

 (10)言語活用能力。

 人は言語を使って思索します。具体的な事柄を抽象化する一方で抽象的な理念を具体化したり、私たちを取り巻く様々な現象が何を意味するのか読み取り、判断したりします。言語活用能力は深く物事を考える力そのものともいえます。

 (11)課題解決力。

 課題を解決するとは、困難を克服することのように聞こえます。しかし、夢を描き、その理想を現実化し、実際に運用することも課題解決です。

 現在の高校の教育は、大学入試をゴールとしているところがたくさんあります。

 そして、入試のための知識をたくさん覚えることに重点が置かれてしまい、大学入学後はあっという間にそれらの知識を忘れてしまう「知識の剥落」と呼ばれる現象が起こっています。

 しかし、いまだかつてなかった事態に対応し、どうなるかわからない未来を生き抜いていくには、単に知識や情報を知っているだけではなく、知識や情報を活用して全体を新たに完成させる「総合的な学力」が必要です。

 本校では、課題解決型の課題研究が学びの柱になっています。

 課題研究をする中で、知識・情報の活用力が身に付きます。

9.育成すべき資質・能力<豊かな感性と表現力>

 現在、開設準備の仕事の一つとして、行事や授業の設計をしているところです。

 まず、特に1年次に本物の体験をたくさんしてもらおうと計画しています。

 また、2年次以降は、自分の学習課題・研究課題に合わせて科目を選択し時間割を作っていきます。

 選択科目の中には、アート・デザイン系列の魅力的な科目が設置されるように計画しています。

 こういった行事や授業で身に付ける力が「豊かな感性と表現力」です。

 「豊かな感性と表現力」も3つの力として説明できると思います。

(6)感性…美しいもの優れたものを感じ取り見分ける力。

(7)表現力…芸術の技能を統合し高い芸術性を表現する力。

(8)創造力…オリジナリティを発揮して新しいものを作り出す力。

 この3つの力が統合されて、芸術性の高い作品ができあがるのです。

 ところで、約百年前、ドイツ新カント学派は価値観を真・善・美(des Wahren, Guten und Schönen)の3つで説明しました。

 「真」は真偽で正しいか正しくないか、「善」は善いか悪いか、「美」は美しいか醜いかの価値観を示しています。

 正しさの認識は学問の中で学び、善行の倫理は道徳で学び、審美は芸術で学ぶとも言われます。

 今の世界では、〇か×かという勉強ばかりしていますので、何かというと「正しさ」が突っ走りがちです。

 美しいもの、優れたものに感動する本物の芸術体験を多く取り入れ、感性を磨いていくことが大切だと痛感しています。

8.育成すべき資質・能力<ビジネススキル>

 キャリア教育のD.E.スーパーは、「キャリア」を「人生の様々な場面で経験する役割」と定義しました。

 人は人生の様々な場面で、学びをする、配偶者の役割をする、介護をするなど様々な役割を経験します。

 この様々な役割の中で、ほとんどすべての人が経験する役割に「仕事をする」という役割があります。仕事は人生の重要なキャリアです。ビジネススキルは将来、皆さんが仕事をする場面で必要な能力です。

 ビジネススキルは次のように分類できると思います。

(3)対人スキル

(4)マーケティングスキル

(5)マネジメント・会計スキル

 (3)対人スキルは、傾聴力、質問力、交渉力、人間関係構築力といった1対1の対人スキルと、プレゼンテーション力、ファシリテート力、コーチ力、育成力、統率力、影響力といった1対多の対人スキルです。

 (4)マーケティングスキルは、段取り力・戦略的思考力など。

 (5)マネジメント・会計スキルは、目標管理力、計画管理力、時間管理力といった管理力、金銭感覚、帳票理解活用力などの会計力です。

 このようなビジネススキルを獲得するための学習活動を、計画的に、国語や情報、商業、産業社会と人間といった教科・科目の授業や、総合的な探究の時間、様々な行事の時間に位置づけます。

 行事と言えば、高校の文化祭では模擬店を実施することも多いです。

 各ショップに経費1万円が配布され、それを使い切って準備をし、売上で配布された1万円を返還する仕組みになっているところが多いと思います。

 売上−経費=0円が目標です。

 「行事は人間関係形成が目標で、お金を儲けるのが目標ではない。」というのがその理由です。

 どうも、これまでは教育と経営は相性が悪かったようですね。

 ビジネススキルの獲得を目標として、経費の中にテナント料や人件費の考えを含み、しっかり利益を上げることができる文化祭の模擬店って、夢でしょうか。

7.育成すべき資質・能力<基礎的・基本的な学力>

 「基本的・基礎的な学力」は授業などの中で習得する「(1)知識」や「(2)技術・技能」と言っていいでしょう。

 「(1)知識」は各教科で学ぶ様々な知識で、たとえば感染症の予防の方法など今後の生活の基礎になるものから、大学入試に必須の知識や高等教育で学問を進める前提となる知識などがこれにあたります。

 「(2)技術・技能」はバスケットボールのシュートの技術や、スクリーントーンの貼り方、ジャガイモの皮のむき方といった「全体の完成」に必要な技術・技能です。

 これらの知識や技術・技能はどれも一つ一つ大切ですが、全体を完成しなければ意味がありません。

 実は、今回の新型コロナウィルス感染防止の対応で、このような基礎的・基本的な学力、特に知識については、オンラインでも十分に身に付けられることが分かってしまいました。

 アフターコロナ、ポストコロナと言われる未来の教育では、学校を欠席したときに、オンラインで遅れを取り戻せるようにするのは当然のこととして行われるようになるでしょう。

 さらに、現行のルールですと残念ながら通信制の学校以外では不可能なのですが、知識理解の学習はオンラインで学び、その成果を単位認定することが可能になっていくのではないでしょうか。

 すると、今までの学校で当たり前だった、先生がプリントを配って板書して講義する授業、生徒は聞いてノートして覚えてテストで点数を取る授業はどうなのでしょう。

 私は、先生の役割は、一人一人の生徒のやる気スイッチを押し、学びのコツを教え、一連の学びをコーディネートし、人間として生き方のお手本になることだと考えています。

 これからの学校では、「先生がいなくてはできない学び」とは何かを考えて、提供していくことになります。

 ところで、単位の修得に関してですが、チャレンジスクールは単位制ですので、「学校外の学修」の単位認定制度があります。

 これは、学校で取った英語や数学の単位に、英語検定や数学検定の学修を上乗せしたり、高卒認定試験で認定された単位を学校の卒業単位として認定したりすることができる制度です。

 この制度、もっと活用できないかな?現在、熟慮中です。

6.育成すべき6つの資質・能力

 本校で育成すべき資質・能力を6つにまとめました。

1 基礎的・基本的な学力

2 ビジネススキル

3 豊かな感性と表現力

4 知識・情報の活用力

5 他者と協働するための資質

6 アントレプレナーシップ

 基本的・基礎的な学力は各教科・科目で習得する「知識や技能」です。これまで、学校で学力といえばこのことをさしていました。

 それをベースとして、ビジネススキル、豊かな感性と表現力、知識・情報の活用力という「思考・判断・表現の力」を育成します。

 他者と協働するための資質とアントレプレナーシップは「学びに向かう力や人間性」を涵養するものです。(涵養、難しい言葉ですね。「かんよう」と読みます。調べてみましょう。)

 それぞれは、表のようにさらに下位の資質・能力を持つと考えられます。それぞれの資質・能力は後でもう少し詳しく説明します。

教育プログラムQ4を見てください

5.学校像と生徒像

 シン・チャレンジスクールはどんな学校でどんな生徒を育てる学校でしょうか。学校像と生徒像をそれぞれ3点にまとめました。

<学校像>

○ 生徒一人一人のウェルビーイングに焦点を当てる学校

○ 多様で柔軟な教育活動を実施する学校

○ 総合的な資質・能力を身に付けさせる学校

 まず、生徒は一人一人、感じ方や考え方や表現の仕方が違います。その一人一人がお互いに個性を尊重しながら学校生活に、「いいね!」「やったー!」と感じてくれ、学校にいることが幸せだと思えてほしい。そんな学校にしたいのです。

 また、多様で柔軟な最先端の教育活動を実施していきます。たとえばVRコンテンツ制作のようなテクノロジーの最先端を学べる施設・設備を整え、PBL(Problem Based Learning)型の課題解決を軸とした教育活動を行っていきます。

 このようなアプローチや方法によって、単に知識や技術の習得にとどまらない、コンピテンシーと言われる人生を生き抜く力、幅広い総合的な資質・能力を身に付けさせていきます。

<育てたい生徒像>

○ 新たな環境で、学びや勤労にチャレンジする生徒。

○ 良き社会の一員として自立する生徒。

○ 自ら調べ、自ら考え、自ら発する生徒。

 新しい学校に入学したり、新しい職場で働き始めたり、新たな人間関係が始まったり、新たな環境になるとどんな人でも戸惑いがあります。でも、自分から一歩前に足を踏み出して、新しい出来事にチャレンジする。そういう前向きな生き方をする人になってもらいたい。

 また、基本的生活習慣を確立し、良好な人間関係を築き、良い社会人を目指してください。善悪の判断ができて自然と善いことができたり、大切なことを粘り強くやり抜くことができたりするような、深い部分で幸福につながる心の在り方が身に付いている人になってほしいのです。

 学問は「なぜ」から始まります。それを自分で調べ、自分で深く考え、自分から発信する学び方を身に付けてほしい。人は一生の間学び続けるものです。自分の成長を促す学び方を身に付けた人になってください。

4.教育の理念

 本校の教育の理念は、チャレンジスクールとしての教育を行っていくんだということと、そのことが教育の最先端であることを踏まえて、起業家精神を養っていくんだということです。そこで、教育の理念を次のように掲げました。

〇不登校や中途退学などでこれまでの学校生活では個性や能力等を十分に発揮できなかった生徒でも、一人一人が安心して存分に学ぶことができる時と場を提供する。

〇志を持って入学した生徒に対し、多様で柔軟な教育を実施し、これからの社会で活躍する起業家精神を持った人材の育成を行う。

 不登校や中退は本人の問題のほかに、学校というシステムそのものにも課題があると考えます。学校のシステムそのものを改善し、バージョンアップさせていくことが大切です。

 その結果、不登校経験者や中退者を支援できるよう改善されたシステムはユニバーサルなシステムになると思います。教育を受けるすべての人のために学校はもっと開かれてよいと思います。

 これは、チャレンジスクール設立の意義でもあります。

 また、近代の人類の成果を踏まえつつ、新しいピリオド(時代区分)である「現代社会」を担う人材を育成するためにも、教育そのものが近代教育から現代教育へとバージョンアップしなければなりません。

 これまで教育が培ってきた価値観や方法や効果といった不易な部分を尊重しながらも、最先端の教育を実施していく必要があります。

 本校を選ばれる皆さんは、この学校で学びたいという志を持っているでしょう。本校では、志を持って入学した生徒に対し、多様で柔軟な教育を実施し、これからの社会で活躍する起業家精神を持った人材の育成を行っていきます。

3.学校ver.3.0

 足立地区に新しくできるチャレンジスクールは、この学校に入りたい、この学校で学びたいという志を持って入学した生徒に対して、定時制で単位制で総合学科であるという仕組みを活かして、多様で柔軟な教育を実施していくことができます。その結果、これからの社会を生き抜く力を持った人材の育成ができるのです。多様で柔軟な教育といったとき、真っ先に思い浮かべるのは、文部科学大臣が一昨年に発表した「Society5.0に向けた学校ver.3.0」です。そこに描かれている新しい学校はどのような学校でしょうか。まとめてみました。

〇Society5.0

 Society 5.0で実現する社会は、IoT(Internet of Things)や人工知能(AI)によって様々な知識や情報が共有される社会です。ドローンの宅配でスニーカーが届くところから始まるYouTubeの動画をご覧になった人も多いと思います。

 そんなSociety5.0時代に向けて学校もバージョンアップをしていきます。「学校ver.3.0」はバージョンアップされる近未来の学校です。

〇カリキュラム

 学校で学ぶカリキュラムはこれまでの学校で行われた12年の学年進行ではなく、16段階のプログラムとして捉えなおします。みんなで一斉に学ぶのではなく、個々の学びのスピードに合わせます。学ぶ内容は、学力の基礎、好奇心、分析的批判的思考、責任感、協働力、価値観創出力、専門性などです。

〇学びの方法

 学校Ver.3.0では、学びの方法として、①個別最適化、②外部のプログラムを活用するユビキタス・ラーニング、③実体験・協働など多様な学習活動、④学習成果の4点を挙げています。

〇生徒と先生

 学校Ver.3.0では、生徒は「能動的な学び手」(アクティブ・ラーナー)になり、先生は「個別最適化された学びのまとめ役」 (ラーニング・オーガナイザー) になります。先生の役割は、個々の子どもの学びと授業における協働学習のデザインとプロデュースを行うことです。これが、新たな公教育の役割になります。

「学校ver.3.0」の資料

2.チャレンジスクールの仕組み

東京都立足立地区チャレンジスクール(仮称)開設準備室

 高等学校のほとんどは通常の課程(全日制課程)をとっていますが、それが「みんなで一斉に」の学校であって、それでは世の中の変化についていきにくい。そこで、チャレンジスクールは定時制、単位制、総合学科の高校として作られました。定時制、単位制、総合学科のメリットを考えてみます。

 まず、定時制は通常の課程以外の時間帯で実施される課程です。ちなみに通信制は登校せず通信で授業を行う課程です。定時制であれば、登校時間は8時半に限らずもっと柔軟に登校できるかもしれません(実際は午前部、午後部、夜間部の三部制となりました)。また、東京都のルールでは生徒数を1クラス30人以内に抑えられ、一人一人に目が向けやすくなります。校則も定時制だということで原則的なルールにできそうです。このように定時制にすることで、これまでの「みんなで一斉に」というスタイルではない学校ができそうです。

 次に、単位制であれば、たった1科目の単位を落としただけでも進級できない、ということもありません。通常の課程では学年制をとることが多く、中学までと同じようにみんなで進級し、みんなで卒業することを前提としていますが、単位制の学校はどちらかというと大学と同じように、一人一人が自分なりのカリキュラムを履修し、卒業が認定されます。また、前期だけの履修で単位修得できたり、夏休みの間に集中講義を受けて単位を取れたりする制度も作れます。大学の講義やオンライン講義を受けたり、英語検定や簿記検定に合格したりすれば単位が認定される学校外の学修の単位認定制度も作れます。

 最後に、総合学科であれば、たくさんの選択科目の中から選ぶことで、生徒一人一人に、自分の得意な科目を伸ばせるオリジナルの時間割を作ってもらうことができます。講義型の授業を減らし、体験的な学びを多く取り入れることができます。今となっては当たり前ですが、探究的な学びを提供しやすいカリキュラムを作ることもできました。

 こうして、「みんなで一斉に」という考え方でなく、「一人一人の生き方に合わせて」という考え方をもとにした新しい学校として、定時制、単位制、総合学科という仕組みを持つチャレンジスクールが誕生しました。

1. チャレンジスクールの誕生

東京都立足立地区チャレンジスクール(仮称)開設準備室

 本校は東京都の新しいチャレンジスクールとして開校します。しかし、いまのところ、学校の名称は未定。現在は「足立地区チャレンジスクール」という仮称がついています。

 「チャレンジスクール」は、不登校や中途退学などでこれまでの学校生活では個性や能力等を十分に発揮できなかった生徒でも、安心して存分に学ぶことができる時と場を提供する学校です。 最初のチャレンジスクールである桐ケ丘高校は、今から21年前に開校しています。その当時は、長引く不況によってニートやフリーターが社会問題となり、不登校や中途退学がクローズアップされ始めていました。

 こんなに不登校の生徒が増えたのは、単に本人の問題だけではなく、学校や社会といった仕組み自体に課題があるのではないか、と考えました。世の中では「みんなで一斉に」という考えから、「一人一人の生き方に合わせて」という考えに変化していました。学校も、これまで「みんなで一斉に」という考えから、登校時間や時間割や授業や校則といった仕組みが作られてきましたが、こういった仕組みをもっと緩やかにし、「一人一人の生き方に」合わせられないだろうか、という様々な試行がされていました。その試行の一つがチャレンジスクールだったのです。